論文雑誌RSC Chemical Biologyの2021年12月号 Number6 Volume2に掲載された論文のカバーイラストを、弊社スペースタイム(ディレクション: 楢木佑佳、イラストレーション: 長澤奈都召)が作成し、採用されました。
Insights into phosphatase-activated chemical defense in a marine sponge holobiont
RSC Chem. Biol. 2, 1600-1607 (2021)
DOI https://doi.org/10.1039/D1CB00163A
イラスト解説
相模湾に生息するチョコガタイシカイメン(Discodermia calyx)は、非常に強い細胞毒性物質カリクリンA(Calyculin A)を持つことが知られています。カリクリンAは、カイメン内部に共生しているバクテリア(Entotheonella sp.)が生産して貯蔵する無毒の物質ホスホカリクリンA(Phosphocalyculin A)が脱リン酸化して生成されますが、そのトリガーがカイメンの物理的な損傷であることがわかりました。脱リン酸化反応はバクテリア由来の脱リン酸化酵素によって進行し、局部的な損傷を受けた時のみ猛毒が生成されるということです。
10cmにも満たないカイメン内部で起きているこの壮大な現象を、水彩タッチで鮮やかに、ドラマティックに描きました。ソフトコーラルやウミシダ、イソギンチャクを背景に描き、高緯度の浅瀬の海中であることを表現。バクテリアとその反応を上部に大きく描きつつ、カイメン内部での反応であるということがわかるよう、トリガーとなるカイメンの傷口から拡大して浮かび上がるようなインパクトある構図にしました。
脇本様よりコメント
海の中に数多く生息する動かない動物たちは一見静かなようですが、時として彼らは目に見えない物質を介したダイナミックな現象を引き起こします。この研究ではその一端を明らかにすることができました。海綿と共生バクテリアが共同して防御機構を発動する瞬間を鮮烈な色使いと印象的な構図で表現していただき大変感謝しております。